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56話 王女たちの震える畏怖

Auteur: みみっく
last update Dernière mise à jour: 2025-11-16 06:00:15

 レスニーは、ミリアと取引をして、今城にいる兵を総動員して隣の王国のミレーナ王国へ逃げようとしていた。ユリシスは、ミリアがいるから怖くて本当のことを言えずにいて、本当は自分のことを好きでいると勘違いをしていた。逃げて助けを求めれば軍事力最強の王国の王子でもあるし、娘が惚れている王子である自分がお願いをすれば、国王のシュリンツ国王も理解して助けてくれると本気で思っていたが、その頼りにしようと思っていたミレーナ王国からも、ミレーナ王国の旗を掲げた兵の援軍が来ていた。

 外を見てレスニーが座り込んだのが見え、外が騒がしいのでシャルロッテとユリシスが不思議に思い、二人で窓の外を覗くと、王城を大勢の武装した兵士が取り囲んでいるのが見えて、二人も驚いて顔が青褪めた。血の気が引いていくのが分かるほどだった。

「お姉様……を怒らせると、やっぱり恐いですわね……」

 シャルロッテが、か細い声で呟く。

「えっと……怒らせるという、恐さの次元の違いを改めて実感いたしました……」

 ユリシスは、引きつった笑みを浮かべた。

「昨夜はミリア様のことを、皆様が大げさに恐いと言ってるだけかと思っていました……」

 ユリシスは昨夜は、ミリアのことを普通の可愛らしい女の子だと思っていて、もしかしたら仲の良い友達になれるかもと思っていたが、やはり自分とは次元が違いすぎると実感した。隣の隣の王国で距離が離れていたが、シャルロッテの王国も援軍を出していて、国王がユウヤとミリアに忠誠を見せる機会だと直接命令を出し、速度の出る騎馬隊を五百も援軍に出し、すでに到着していた。隣のアルム王国からも騎馬隊、歩兵を五百以上の援軍を出してきていた。

 この状況だと、帝国の支配国に逃げるのは不可能だった。支配国から逃げるとなると、周りには友好国はないし、交流をしている王国もなかったので、諦めるしかなかった。

「それにお父様には、まだ伝えておりませんので……」

 ミリアは、嘲笑うように静かに言葉を続けた。

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